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  • 2011.07.08
  • 関の考え方
  • 原子力発電の論点整理 「第一回 原子力発電導入理由」 

  • ※このシリーズは、原子力発電について正しい認識を持って、今後、この発電方法の取扱方針についてどのように判断するか、そのための論点整理を目的としています。
    そのため、先に結論ありきとしての表記方法はとりません。

    では、第一回目として、そもそも日本が原子力発電を導入した理由(長所)を調べてみました。ある程度ご存知とは思いますが、再度、確認をしてみてください。

    参考数値としては、内閣府発表の統計数値などを参考に記載を試みました。

    Ⅰ.原子力発電の長所

    (1)日本のエネルギー資源の海外依存状況

    電気などのエネルギーは、家庭活動・企業活動・防衛活動など、あらゆる分野で使用されている。

    つまり、国家戦略として、エネルギーを自国で出来るだけ多く製造できることが、国家運営の安定の基礎となる。

    日本はエネルギーを安定的に供給できる体制にあるだろうか。

    実は、日本はエネルギー資源(エネルギーを生み出すための石炭、石油、天然ガス、原子力などの資源)そのものが非常に少ない。

    現状では、海外から約82% (原子力を除くと約96%)を輸入に頼っている。
    つまり、供給構造は非常に脆弱なのだ。

    参考:エネルギー輸入依存度(原子力を含む)







    イタリア85%
    日本82%
    ドイツ60%
    フランス49%
    アメリカ25%
    イギリス20%


    (2)エネルギー資源の採掘可能年数

    このエネルギー資源は、あと何年、採掘可能なのだろうか。実は、エネルギー資源も採掘できる年数には限りがある。

    参考:エネルギー資源の採掘可能年数
    (BP Statistical Review of World Energy 2010 参照)






    石炭124年 (確認埋蔵量を現在の消費量で按分)
    石油47年 同上
    天然ガス464年 同上
    原子力4100年(ワンススルー) ⇒ 核燃料を一度きり使用
    原子力4130年(プルサーマル) ⇒ 使用済核燃料を再利用
    原子力43000年(高速増殖炉サイクル) ⇒ 発電しながら原子燃料生成

    上記の参考値を見て頂くとお判りの通り、石炭にしろ、石油にしろ、天然ガスにしろ、現段階で確認できている埋蔵量は、150年にも満たない。

    そこで、原子力に頼り、発電しながらさらに原子燃料を生成する高速増殖炉の開発の研究を進めていったのである。

    (3)エネルギー資源の地域分布

    上記でみたエネルギー資源は、埋蔵している地域に分布があり、政治的に安定した地域から安定的に供給を受けたいものである。

    参考:地域分布
    (BP Statistical Review of World Energy 2010 参照)
    (Production and Demand:OECD・NEA・IAEA 参照)




    石炭北米 29.8%、アジア 22.4%、ロシア 19.0%
    石油 中東 59.9%、アフリカ10.0%、中南米 9.8%
    天然ガス中東 41.0%、ロシア 23.4%、アフリカ 7.9%
    ウラン豪州 26.6%、北米 16.1%、アフリカ15.1%

    ウランや石炭は、政治の比較的安定した地域から算出されている。
    中東などでは戦争等が頻発し、その結果、石油価格に影響を与えている。

    (4)発電コストにおける燃料費割合

    また、エネルギー資源の価格は変動するが、この影響が小さい発電方式ほど発電コストに変動が小さく、安定してエネルギーの供給が行える。

    参考:各発電方式ごとの燃料費の割合
    (総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等小委員会 平成16年)




    原子力1割程度
    石炭4割程度
    石油6割程度
    天然ガス6割程度

    (5)世界の電力発電量

    発電電力量は目を見張る進捗を見せている。
    ますますエネルギー資源が必要とされ、その獲得競争は激化する。

    ※この点からも上記(4)の燃料比率の割合が低いことは重要である。

    参考:世界の発電電力量の推移(世界合計)
    (財)日本エネルギー経済研究所:アジア・世界エネルギーアウトルック2010




    1990年111,000TWh
    2008年20,000
    2020年27,000 予想
    2030年35,000 予想

    つまり、発電コストの変動幅が小さいことは貴重なことである。

    (6)地球温暖化対策

    地球温暖化防止に向けて、CO2排出比率の小さい発電施設は有効。

    参考:各種電源別CO2排出量
    (1KWh当たりのライフサイクルCO2排出量、
    電事連 原子力・エネルギー図面集2011)

    石炭火力943g
    石油火力738g
    LNG火力 599g
    コンバインドLNG474g
    太陽光38g
    風力25g
    原子力20g
    以上、大まかに(1)から(6)の項目を確認してみた。

    このような数字を眺めつつ、何故、日本が原子力発電を始めようと当初
    考えたのか、数字上の理屈のみは整理できたでしょうか。

    原子力発電所は、商業用に1966年から運転が開始しました。私が1歳の時です。
    もう開始から45年ほど経ちました。

    原子力発電の安全性や、電源のベストミックス、世界の発電施設状況など、
    今後、順次、各項目を確認して行く予定です。

    皆様ご自身の意見確立に役立ててください。 (次回に続く)

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